◆「主婦年金切り替え忘れ」問題とは?
家計マネジメント・ラボ ファイナンシャルプランナー(CFP)の中村宏です。
会社員の妻(専業主婦)は、公的年金の保険料を支払っていませんが、国
民年金に加入し、保険料も払っているとみなされます。
そして、65歳になると、終身の国民年金(基礎年金)を受け取りはじめま
す。
会社員の夫が厚生年金に加入し、厚生年金保険料を支払っているため、妻
はそうなっているのです。
夫が脱サラし、自営業になると、この夫、国民年金に加入しなければなり
ません。役場で手続きをし、国民年金保険料を支払う必要があります。
そして、これだけではありません。
妻も、国民年金の加入手続きをし、自分の保険料を支払う必要があるんで
す。
この手続を漏らした妻が結構いる。数十万人いるといわれています。
知らずにそのままにしていた人は、25年という国民年金の加入資格を満た
さず、65歳からの年金がもらえないかもしれない。
たとえ加入資格を満たしていても、加入期間が短かければ、もらう年金が
少なくなります。
「これはかわいそうだ。救済策を打たないといけない。加入手続きをせずに
未加入だった人も、過去2年分の保険料を払うだけで、残りの保険料未納期
間も保険料を払ったと考えて、老後にはちゃんと年金を支給することにしよ
う」という制度が、この1月にスタートしたのでした。
これに対して、「そんなの不公平だ!正直者がバカをみる!」という大き
な声があがりました。
というのも、夫が会社員から自営業になったときに、ちゃんと正しい手続
きをして、真面目に保険料を払ってきた妻もたくさんいたからです。
ということで、この仕組み、凍結されました。
なんともお粗末。
それにしても、日本の社会の仕組みは、サラリーマン+専業主婦世帯と、
自営業夫婦世帯の2つを前提にし、人生の途中でキャリアを変更することは
前提にしていないものになっていますね。
多様化し過ぎて収拾がつかないからと、社会の仕組みを「個人」単位にし
てしまうと、家族の絆がますます希薄なものになりそうです。